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第10回 受賞者のプロフィール 受賞者のスピーチ 選考経過 ノミネートされた作品

第10回平和・協同ジャーナリスト基金賞の選考経過

 第10回の顕彰をさせていただくため、候補作品(原則として2003年11月以降に発表されたもの)を募集したり、基金会員に推薦を依頼したところ、56点が集まりました。
選考には、鎌倉悦男(プロデューサー・ディレクター)、小林佐智子(映画プロデューサー)、坪井主税(札幌学院大教授、平和学)、前田哲男(東京国際大教授、軍事評論家)、森田邦彦(翻訳家)、山谷哲夫(ドキュメンタリー監督)、由井晶子(元沖縄タイムス編集局長)の7氏があたりました。

 今年度の候補作品(56点、うち映像関係は12点)はバラエティーに富み、テーマも多岐にわたりました。入賞を決めるまでにかなりの論議を要しましたが、結局、7件が選ばれました。

 

■選考委ではまず、来年(2005年)が゛被爆60年にあたるところから、基金賞には核問題を扱った作品を推そうということになりました。その結果、長崎の高校生による反核平和署名活動をまとめた、高校生一万人署名活動実行委と長崎新聞報道部による共著『高校生一万人署名活動~高校生パワーが世界を変える』がまず選ばれました。

 同書によると、1998年に始まった、高校生による「核兵器廃絶と世界の平和の実現を求める署名」はこれまでに3回にわたって行われ、署名数は10万近くに達し、高校生の手で国連に届けられた。海外の若者との交流も進んでいる。この本は若い世代に受け継がれた反核平和運動を生き生きと伝えており、「21世紀に希望を与える書」とされました。

本年はビキニ水爆被災事件から50年にあたあたりました。そこでビキニ事件関係からも1点を選ぼうということになり、高知県ビキニ水爆実験被災調査団編の『もうひとつのビキニ事件』を選びました。この事件では、第五福竜丸以外に1000隻を超える船舶が被災していたという隠れた事実を、長年にわたる追跡調査で明らかにした記録です。そうした地道な調査を支えてきたのはここでも高校生たちでした。若い人たちの活動に敬意を表するため基金賞を贈ろうということで意見が一致しました。

 イラク戦争関係でも1点を選ぶことになり、高遠菜穂子さんの『戦争と平和』が奨励賞に選ばれました。高遠さんはイラクで武装グループに拘束された1人ですが、同書はその経験や、帰国後の心境をつづったものです。「普通の若い女性がなぜイラクへ行ったのか、そこでどんな活動をしたのか、それに拘束時の模様もリアルに書かれていて、読ませる」「いろいろな問題を提示しており、日本人及び日本社会について考えさせる」とされました。

 選考委はまた満場一致で、当年90歳の本多立太郎氏に奨励賞を贈ることを決めました。本多氏は、声がかかるところ全国どこにでも足を運び、「戦争は別れと死である。それ以外には何もない」と、自らの戦争体験を「戦争出前噺」と称して語ってきました。1986年以来、この11月で1000回を超えました。話を聴いた人は11万人にのぼります。そのほか、新聞への投書、通信の発行と、精力的に反戦・平和のための言論活動を続けてこられました。これに敬意を表そうというわけです。

 それから、本年は日露戦争から 100年にあたります。それを論じた多くの著作が発表されましたが、又吉盛清氏が沖縄タイムスに寄稿した連載『沖縄人・兵士・植民地――日露戦争 100年から考える』が選考委員の注目を集めました。「琉球処分によって日本国民とさせられた沖縄の人たちが、日露戦争に動員される中で、日本による侵略と植民地支配に加担してゆく過程を論証した見事な論考」「旧満州を何度も訪ねるなど、現場を踏査しながら沖縄の近現代史を検証しており、その粘り強い、丹念なフィールドワークは称賛に値する」として奨励賞を贈ることにしました。

 選考委で議論になったのは琉球新報社の「日米地位協定改定キャンペーン」でした。これには、外務省秘密文書を暴露するという大スクープも含まれており、一部の選考委員からは「ぜひ基金賞を」という意見が述べられました。しかし、すでに日本ジャーナリスト会議のJCJ大賞、第4回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞していることから、授賞見送りになりました。フォトジャーナリズム月刊誌『DAYS JAPAN』にも称賛の声が続出しましたが、これもすでに日本ジャーナリスト会議のJCJ賞を受賞しているので、同様の扱いとなりました。

 活字部門では、そのほか、比嘉康文氏の『「沖縄独立」の系譜』、西村秀樹氏の『大阪で闘った朝鮮戦争』、林克明、大富亮氏の『チェチェンで何が起きているか』が最終選考まで残りました。いずれも労作として高く評価されました。

■映像部門では基金賞の該当作はなく、2点が奨励賞に選ばれました。まず、海南友子さん制作・監督の『にがい涙の大地から』は、旧日本軍が中国に遺棄した毒ガスによって、今なお中国の人たちが苦しんでいる実態を明らかにしたドキュメンタリーです。「戦後60年たった今も中国国民の戦後世代にまで戦争の傷跡を残し、しかも今なお補償がなされていない問題を正面からとらえている」「技術的にはまだ問題があるが、毒ガスの被害者に迫る作者のひたむきさが画面から伝わってくる」とされました。

 フジテレビジョン制作の『HARUKO(ハルコ)』は、韓国から日本にやってきた一人の女性が、多くの子供たちを、夫に頼らず育てながら、たくましく生きていく日々を私的なフィルムをたくみに使って構成したドキュメンタリーです。「在日一世の母親の本音が出ている」「とにかく、痛快で面白い」「図らずも日本の戦前・戦後社会を新たな視点で見つめる結果となってる」と評されました。

 第五福竜丸以外の船舶乗組員のビキニ水爆被災、つまり「もう一つのビキニ事件」を追った南海放送制作の『わしも死の海におった』にも高い評価が寄せられましたが、すでに第4回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、第24回地方の時代映像祭大賞を受賞しているので、授賞見送りとなりました。

■協同関係は応募、推薦が少なく、今回は初めて授賞作がありませんでした。が、大嶋茂男氏の『持続可能な「社会的経済」への革新』について「GNP中心の思考は限界にきているから、人間を中心とした経済に転換しなくてはならないという主張は正しい。それへの実践的政策も提言していて傾聴に値する」との意見がありました。

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