大賞に毎日新聞夕刊編集部の「夕刊・特集ワイド」

2016年度の基金賞が決定、12月10日に贈呈式

 

 平和・協同ジャーナリスト基金(PCJF)は、2016年12月1日、第22回平和・協同ジャーナリスト基金賞を発表しました。今年度の候補作品は69点(活字部門25点、映像部門41点、インターネット関連3点)でしたが、この中から次の8点を入賞作としました。

 12月10日(土)午後1時から、日本記者クラブ大会議室(東京・日比谷の日本プレスセンタービル9階)に受賞者・団体をお招きして賞贈呈式を行います。贈呈式の前半は賞状等の授与、後半は祝賀パーティーで、前半のみ参加の方は無料、祝賀パーティーまで参加の方は参加費3000円です。

 

◆基金賞(大賞)(1点)

 毎日新聞夕刊編集部の「夕刊『特集ワイド』における平和に関する一連の記事」

◆奨励賞(7点)

★ノンフィクション作家、大塚茂樹さんの「原爆にも部落差別にも負けなかった人びと」(かもがわ出版)

★原爆の図丸木美術館学芸員、岡村幸宣さんの「≪原爆の図≫全国巡回――占領下、100万人が観た!」(新宿書房)

★よしもと所属の夫婦漫才コンビ・DAYSJAPAN編集委員、おしどりマコ・ケンさんの原発問題での情報発信

★金澤敏子、向井嘉之、阿部不二子、瀬谷實さんの「米騒動とジャーナリズム」(梧桐書院)

★上丸洋一・朝日新聞記者の「新聞と憲法9条」(朝日新聞出版)

 

★瀬戸内海放送制作の「クワイ河に虹をかけた男」

★森永玲・長崎新聞編集局長の「反戦主義者なる事通告申上げます――消えた結核医 末永敏事――」(長崎新聞連載)

 第22回基金賞の選考は、鎌倉悦男(プロデューサー・ディレクター)、佐藤博昭(日本大学芸術学部映画学科講師)、清水浩之(映画祭コーディネーター)、高原孝生(明治学院大学教授)、鶴文乃(フリーライター)、前田哲男(軍事ジャーナリスト)、森田邦彦(翻訳家)の7氏によって行われました。

 

 今年度の選考で目立ったのは、新聞社からの応募や推薦が少なかったことでした。これについて、審査員の1人は「昨年は、戦後70年を機に戦後70年を総括する企画や、安保問題や憲法問題に取り組んだ新聞が多く、力作が目白押しだった。今年はその翌年とあって、全般的に低調。いわば“戦後70年疲れ”と いったところか」と述べました。そうした面があったものの、今年も、原爆、憲法、沖縄の基地問題、原発問題などを粘り強く追った力作が並びました。

■基金賞=大賞(1点)には、毎日新聞夕刊編集部の『夕刊「特集ワイド」における平和に関する一連の記事』が選ばれました。同紙の「夕刊 特集ワイド」は、夕刊二面の全面を使った大型紙面で、毎夕、さまざまな問題を取り上げています。2015年から16年にかけての紙面では、市民の関心が高い集団的自衛権、安保関連法、憲法、沖縄の基地問題、原発問題などを積極的に取り上げ、選考委では「ユニークな企画性が感じられ、現在のマスメディアの中では異彩を放つ意欲的な紙面」とされました。沖縄・高江のヘリパッド建設現場で「土人発言」問題が起きた時、これを直ちに紙面化した点も評価されました。

 

■奨励賞には活字部門から6点、映像部門から1点、計7点が選ばれました。

 大塚茂樹さんの『原爆にも部落差別にも負けなかった人びと』は、広島市福島町を中心とした地域の戦後史を描いたノンフィクションです。この地域はかつて被差別部落でしたが、原爆で甚大な被害を受けます。いわば、この地域の人たちは二重の苦しみに見舞われたわけですが、本書はその苦しみがどんなに深いものであったかを克明に明らかにしています。選考委では「著者はこれをまとめるのに3年を費やし、インタビューした人は60人を超える。そうした取り組みに敬意を表したい」との発言がありました

 岡村幸宣さんの『≪原爆の図≫全国巡回――占領下、100万人が観た!』も原爆にからむノンフィクションです。丸木位里・俊夫妻が「原爆の図」を発表したのは米軍占領下の1950年。米軍が原爆に関する報道を禁止していたから、日本国民が原爆被害の実態を知るのは困難な時代でした。が、本書によれば、なんと「原爆の図」巡回展が全国各地で催され、大勢の入場者があったというのです。「国民の間で今なお反核意識が強いのは、こうしたことがあったからかも。これまで知られていなかった事実を丹念に掘り起こした努力は称賛に値する」と、全会一致で授賞が決まりました。

 原発問題も引き続き日本にとって重大な課題とあって、原発関係からもぜひと選ばれたのが、おしどりマコ・ケンさんの『原発問題での情報発信』です。お二人は漫才コンビですが、市民の立場から、原発事故に関し本当に必要な情報が出てこない状況に疑問を抱き、東電や政府の記者会見に出席したり、福島にも通って原発事故に関する情報を執筆、動画、講演などで発し続けています。こうした活動が「市民運動の支えなっている」と評価されました。

 金澤敏子、向井嘉之、阿部不二子、瀬谷實さんの『米騒動とジャーナリズム』は、大正時代に富山県から全国に広がった米騒動の全容を新聞報道から検証した、4年がかりの労作です。そこでは、米騒動に無関心だった新聞が、政府から取材規制を受けながら次第に民衆の側に立ってゆく報道姿勢の変化が立証されています。選考委では「今のジャーナリズムも、今こそこうしたジャーナリズムの歴史に目を向け、庶民の側に立った報道をしてほしいという著者たちの願いが伝わってくる」とされました。

 上丸洋一・朝日新聞記者の『新聞と憲法9条』は、憲法関係からもぜひ選ばねばという審査員の配慮から授賞作となりました。「憲法改定が現実味をおびてきた今、憲法の眼目ともいうべき9条の意義を歴史的に、しかも、分かりやすく解明した本書の今日的意義は大きい」とされました。

 「かつてこんな医者がいたとは」と審査員全員が驚きの声を上げたのが、森永玲・長崎新聞編集局長の『反戦主義者なる事通告申上げます――消えた結核医 末永敏事――』でした。戦前、米国に留学までしながら日中戦争下に軍部への協力を拒否したため投獄され、悲劇的な生涯を閉じた医師の空白部分に迫った連載記事です。単に1人の医師の悲劇を明らかにしただけでなく、医師の受難とからめて現行の特定秘密保護法や、政府が目論む共謀罪に警鐘を鳴らしていることを評価する審査員もいて、授賞作となりました。

 

■映像部門では、瀬戸内海放送の『クワイ河に虹をかけた男』(満田康弘監督)が奨励賞に選ばれました。

太平洋戦争中、タイとビルマ(ミャンマー)を結んだ「泰緬鉄道」の建設に陸軍通訳として関わった永瀬隆さんの、半世紀にわたる贖罪の足跡を追ったドキュメンタリーです。選考委は「妻の佳子さんと二人三脚でタイへの巡礼を続け、犠牲者の慰霊、連合国軍元捕虜たちとの和解、タイ人留学生の日本への受け入れなど、国がやろうとしない『戦後処理』を独力で行ってきた永瀬さんの執念に圧倒される。彼が謝罪した元捕虜たちの心の変化も捉えて、人は『戦争』にどう決着をつけるかを考えさせてくれる、深みのある作品になった」としました。

 

■そのほか、活字部門では、高知新聞取材班の『秋のしずく 敗戦70年のいま』、映像部門では、是枝裕和監督の『いしぶみ』(広島テレビ)、毎日放送の『テレビの中の橋下政治~“ことば”舞い散る8年~』、テレビ熊本『還らざる魂魄~シベリア・死者たちの声が聞こえる』、熊本県民テレビ『生きる伝える“水俣の子”の60年』、佐藤太監督の『太陽の蓋』、藤本幸久・影山あさ子監督の『圧殺の海第2章 辺野古』『高江 森が泣いている』が最終選考まで残りました。

 荒井なみ子賞は該当作がありませんでした。

 

<受賞者・団体のプロフィル(敬称略)>

◆基金賞

 

 『夕刊「特集ワイド」における平和に関する一連の記事』

 

 毎日新聞夕刊編集部が作る「特集ワイド」の基本コンセプトは「デイリーマガジン」。

 新聞が陥りがちな「書きたい記事」でなく、ライバルとしのぎを削る週刊誌のように「読者が読みたい記事」を目指している。ボリュームはほぼ週刊誌2ページ分。ネタは政治、事件、芸術、トレンドとジャンルを問わないが、あえて言えば「人だかりのしている話題」。

安保法制や時代錯誤の改憲草案、原発再稼働など安倍政権の「暴走」にもの申す一方、SMAP解散報道に落胆したファンの「スマロス」克服法を探ったりもする。部員には「鋭いミーハーになれ」とハッパをかけている。著名人の大型インタビュー「この国はどこへ行こうとしているのか」も名物企画(夕刊編集部長・平野幸治)

 

NEXT

 

◆奨励賞

 

★「原爆にも部落差別にも負けなかった人びと―広島・小さな町の戦後史―」

 (かもがわ出版)

 

 大塚 茂樹(おおつか・しげき)

 1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学第一文学部卒業。専攻=日本現代史。主な職歴は、岩波書店に29年間勤務し岩波現代文庫、単行本、『世界』などの編集活動に従事。2014年定年の四年前に退職し現職。1976年に原水爆禁止運動で被爆者に出会ったのをきっかけに、反核運動や被爆者支援活動にも参加。後に被爆体験の意味を若い世代に問いかけ

る著作を執筆。著書に被爆者運動の出発を描いた『まどうてくれ――藤居平一・被爆者と生きる』(旬報社)。アトピー性皮膚炎の小学生が被爆者と出会う児童読み物『やんばる君』(筆名・中野慶、童心社)がある。その他の主著に、戦前・戦後の左翼運動の群像を描いた評伝『ある歓喜の歌――小松雄一郎・嵐の時代にベートーヴェンを求めて』(同時代社)がある。

 

★「《原爆の図》全国巡回――占領下、100万人が観た!」(新宿書房)

 

 岡村 幸宣(おかむら・ゆきのり)

 1974年東京都生まれ。東京造形大学造形学部比較造形専攻卒業、同研究科修了。2001年より原爆の図丸木美術館に学芸員として勤務し、丸木位里・丸木俊夫妻を中心にした社会と芸術表現の関わりについての研究、展覧会の企画などを行っている。著書に『非核芸術案内―核は

どう描かれてきたか』(岩波書店、2013年)。主な共著に『「はだしのゲン」を読む』(河出書房新社、2014年)、『3.11を心に刻んで 2014』(岩波書店、2014年)、『山本作兵衛と炭鉱の記録』(平凡社、2014年)など。

 

★原発問題での情報発信

 

 おしどりマコ・ケン

 マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。社団法人漫才協会会員。認定NPO法人沖縄・球美の里理事。フォトジャーナリズム誌「DAYSJAPAN」編集委員。

 東京電力福島第一原子力発電所事故(東日本大震災)後、随時行われている東京電力の記者会見、様々な省庁、地方自治体の会見、議会・検討会・学会・シンポジウムを取材。

また現地にも頻繁に足を運び取材し、その模様を様々な媒体で公開している。

 

★「米騒動とジャーナリズム」(梧桐書院)

 

 金澤 敏子(かなざわ・としこ)

 1951年生まれ。富山県入善町在住。細川嘉六ふるさと研究会代表。北日本放送アナウンサーを経て、テレビ・ラジオのドキュメンタリーを四〇本余りを制作。

 主著 『泊・横浜事件七〇年 端緒の地からあらためて問う』(共著、梧桐書院、2012年)、『NPOが動く とやまが動く市民社会これからのこと』(共著、桂書房、2012年)日本NPO学会審査委員会特別賞受賞。『民が起つ 米騒動研究の先覚と泊の米騒動』(共著、能登印刷出版部、2013年)。

 主な受賞番組 NNNドキュメン’96『赤紙配達人~ある兵事係の証言~』1996年 芸術祭賞放送部門優秀賞 芸術選奨文部大臣新人賞 アジアテレビ映像祭沖縄賞 民間放送連盟賞テレビ教養部門優秀賞 放送文化基金個人賞ほか、KNBスペシャル『鍋割月の女たち~米騒動か

ら八〇年』1999年 平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞ほか。

 

 向井 嘉之(むかい・よしゆき)

 1943年生まれ。富山市在住。ジャーナリスト。とやまNPO研究会代表。イタイイタイ病を語り継ぐ会代表。元聖泉大学人間学部教授(メディア論)。日本NIE学会会員。日本NPO学会会員。

 主著 『一一〇万人のドキュメント』(桂書房、1985年)、『生きて生きぬいて恵子と明子ある中国残留孤児をめぐる百年の記憶』(青青編集、2009年)、『第二次世界大戦 日本の記憶・世界の記憶 戦後六五年海外の新聞は今、何を伝えているか』(楓工房、2010年)、

『イタイイタイ病報道史』(共著、桂書房、2011年)平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞。『泊・横浜事件七〇年 端緒の地からあらためて問う』(共著、梧桐書院、2012年)、『NPOが動く とやまが動く市民社会これからのこと』(共著、桂書房、2012年)日本NPO学会審査委員会特別賞受賞。『民が起つ 米騒動研究の先覚と泊の米騒動』(共著、能登印刷出版部、2013年)など。

 

 阿部 不二子(あべ・ふじこ)

 1919年生まれ。富山県朝日町在住。細川嘉六ふるさと研究会顧問。1947年「泊演劇研究会」を夫・阿部順三ら仲間と結成。茶道裏千家の師範として1979年より三二年間指導にあたる。

 

 瀬谷 実(せや・みのる)

 1946年生まれ。東京都清瀬市在住。ジャパン・プレス・サービス(JPS)代表取締役。翻訳、英文書籍の編集に従事。『広島TODAY』(W・バーチェット、連合出版)、『広島の目をもって―原子戦争、核の恐喝と道義的理想』(ジョセフ・ガーソン、日本原水爆禁止協議会)、“The DAY the SUN ROSE in the WEST-Bikini, the Lucky Dragon, and I” (大石又七、University of Hawaii Press)等の和訳・英訳に協力。

 

「新聞と憲法9条 (自衛)という難題」(朝日新聞出版)

 

 上丸 洋一(じょうまる・よういち)

 1955年2月、岐阜県高山市生まれ。朝日新聞記者。78年、朝日新聞社入社。東京本社人事部員、千葉支局員、学芸部員、学芸部次長、オピニオン編集長、「論座」編集長などを経て2007―15年、編集委員。2014年から「新聞と9条」取材班。著書 『本はニュースだ!』(径書房、1993年)、『「諸君!」「正論」の研究』(岩波書店、2011年)、『原発とメディア 新聞ジャーナリズム2度目の敗北』(朝日新聞出版、2012年)平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞、新聞労連ジャーナリズム大賞、科学ジャーナリスト大賞(「原発とメディア」取材班として)。

 

★映画「クワイ河に虹をかけた男」

 

 アジア太平洋戦争下、旧日本軍が建設した泰緬鉄道――

 その「死の鉄道」の贖罪と和解に生涯を捧げた永瀬隆・20年の記録

 旧日本軍が建設した「死の鉄道」―。その贖罪と和解に生涯を捧げた男がいた。時に旧連合国捕虜や旧日本軍関係者の強い反発に遭いながら、彼は妻とともにその歩みを続けた。元捕虜は彼を「握手できるただ一人の日本人」「レジェンド」と呼んだ。一方、復員する日本軍12万人全員にタイ政府が「米と砂糖」を支給してくれた恩義に報いようと、学生らに奨学金を贈り続けた。93年の生涯でタイへの巡礼は実に135回に及んだ。これはその男の晩年を約20年間にわたって取材し続けた地元放送記者による記録である。

 

 制作 瀬戸内海放送  配給 きろくびと

 監督

  満田 康弘(みつだ・やすひろ)

 1961年香川県生まれ。1984年KSB瀬戸内海放送入社。主に報道・制作部門でニュース取材や番組制作に携わる。現在、報道クリエイティブユニット岡山本社所属。

(映画「クワイ河に虹をかけた男」オフィシャルサイトから)

 

★「反戦主義者なる事通告申し上げます――消えた結核医 末永敏事――」

 (長崎新聞連載 2016年6月~10月)

 

 森永 玲(もりなが・りょう)

 1964年佐世保市生まれ。長崎新聞編集局長。88年長崎新聞入社。報道部、対馬支局、佐世保支社編集部などを経て2009年報道部長、15年論説委員長、16年から現職。

主著に「本島等の思想」(共著、2012年)など。

 

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